カテゴリー: ‘相続・遺言について’

遺言書を作る(秘密証書遺言について)

2012-12-26

秘密証書遺言とは,公証人及び証人の前に封印した遺言書を提出して,遺言書の存在は明らかにしながら,内容を秘密にして遺言書を保管することができる方式の遺言です。

作成の手順としては,

①遺言者は遺言の内容を書面に記し,署名押印をする

               ↓

②遺言の内容を記した書面を封筒に入れて,遺言の内容を記した書面に使用したものと同じ印鑑で封印する

               ↓

③封書を公証人及び証人二人の前に提出して,自己の遺言書であること,その筆者の氏名及び住所を申述する

               ↓

④公証人が封書上に,日付,遺言者の③の申述内容を記載する

               ↓

⑤遺言者及び公証人,証人二人が封書上に署名押印する

以上①から⑤の手順により作成するものです。

【秘密証書遺言で遺言書を作成することのメリット】

① 上記作成手順の①~②は遺言者一人で行うことができるので,遺言の内容を誰にも知られずに秘密にすることができます。

② 上記のような作成手順を取ることにより,遺言者が間違いなく作成したものであることを明らかにできるので,誰により作成されたものかという作成名義についての問題が起こる危険性が少ないといえます。

③ 自筆証書遺言と異なり,自書による必要がなく,ワープロや点字器によって作成してもよく,また,第三者が筆記したものでも有効なものとなります。

【秘密証書遺言で遺言書を作成することのデメリット】

① 遺言の内容を秘密にできるというメリットと裏腹に,公証人による内容のチェックがありませんので,遺言書の内容に法律的に不備があったり,無効な内容となる危険性があります。

② 秘密証書遺言は,遺言書を発見したものが,必ず,家庭裁判所に遺言書を持参し,相続人全員に呼出状を発送した上で,その遺言書を検認するための検認手続を経なければならない。

秘密証書遺言で遺言書を作成することは,以上のようなメリットとデメリットがあります。

ただ,秘密証書遺言は一般にはあまり知られておらず,また,自筆証書遺言,公正証書遺言を含めた三類型のなかでも,実際の作成数も少ないものと言われています。私も,実務を行うなかで秘密証書遺言を取り扱う機会はなかなかありません。

そのような意味からは,その効用と欠点をよく理解している人が作成する遺言書の類型が秘密証書遺言であるといえるでしょう。

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弁護士 野澤  渉
〒104-0061
東京都中央区銀座1丁目9番5号
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FAX 03-5250-9951
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遺言書を作る(公正証書遺言について)

2012-11-30

公正証書遺言とは,遺言者が遺言の内容を公証人に伝え,公証人がこれを筆記して公正証書による遺言を作成する方式の遺言です。

公証人は,公証役場において執務を行っています。「公証役場」については,なじみの薄い方もいらっしゃるかもしれませんが,全国で約300箇所あり,都内には45箇所あります(平成24年11月現在)。

公正証書は,法律の専門家である公証人が法律に従って作成する公文書であるとされています。

【公正証書遺言で遺言書を作るメリット】

①公証人は,長年,裁判官や検察官として法律実務に携わってきた人たちなので,法律的に整理された適正な内容の遺言を作ることができます。また,形式的な方式の不備により遺言が無効となることもありません。

②公正証書遺言は,原本が公証役場で保管されるので,遺言書が破棄されたり隠匿されたり,また,改ざんされたりすることがありません。

③平成元年以降に作成された公正証書遺言については,検索システムが整備されていますので,相続人によって遺言書の有無を容易に検索することができます。

④公正証書遺言は,家庭裁判所での検認の手続が不要なので,相続開始後,速やかに遺言の内容を実現することができます。

【公正証書遺言で遺言書を作るデメリット】

①作成には費用がかかります。どのくらいの費用がかかるのかは,一様ではなく,公証役場で見積をしてもらう必要があります。

②公正証書遺言の作成には,証人二人の立会いが必要とされていますので,適当な証人がいない場合に困ります。

しかし,適当な証人がいない場合には,公証役場が紹介してくれるので証人のことはあまり問題とはなりません。

公正証書遺言には,以上のようなメリット,デメリットがあります。

弁護士の立場からは,法律的に間違いのない確実な遺言書を作成することができるということで,他の方式を選ぶ理由がない場合には,費用がかかっても公正証書遺言で遺言書を作成することをご依頼者などには勧めています。

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遺言書を作る(自筆証書遺言について)

2012-10-29

自筆証書とは,遺言者が遺言書の全文,日付及び氏名を自分で書き,押印して作成する方式の遺言です。

映画やドラマで登場する遺言書は,多くの場合,この自筆証書遺言です。そのため,あまり法律に詳しくない世間一般の方たちがイメージする遺言書といえば,自筆証書遺言だと思われます。

【自筆証書遺言で遺言書を作るメリット】

①自分で書けばよいので,誰にも知られずに,いつでも遺言書を作成できる。

②作成に費用がかからない。

【自筆証書遺言で遺言書を作るデメリット】

①全文を遺言者が手書きをしなければいけない等,方式が厳格に決まっているので,形式的な方式不備により無効となる危険性がある。

②遺言者が法律の知識に乏しい場合には,遺言書の内容に法律的な不備が生じる危険があり,後に紛争になったり,遺言書が無効となってしまうこともある。

③偽造,改ざんの危険性がある。

④相続発生後,遺言書を発見した者が,必ず,家庭裁判所に遺言書を持参し,相続人全員に呼出状を発送した上で,その遺言書を検認するための検認手続を経なければならない。

自筆証書遺言には,以上のようなメリット,デメリットがあります。映画やドラマを見ていると,自筆証書遺言は,遺言者が自分の思いの丈を死後遺された人たちに直接伝えることができてよいものと思いがちですが,上記したデメリットを考えると,必ずしも,適切な遺言書の方式とはいえないところがあります。実際,映画やドラマで登場する自筆証書遺言の多くは,方式の不備等により無効なことが多いです。

法律的な知識があまりない方や,財産関係や家族・親族関係が複雑な方が遺言書を作る場合には,自筆証書遺言の作成は避けた方が得策といえるでしょう。

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遺言を作る(遺言の種類)

2012-09-30

民法では,普通方式の遺言の種類として,「自筆証書遺言」,「公正証書遺言」,「秘密証書遺言」の3種類を定めています。別の言い方をすると,これら3種類の遺言以外の方式で作成をしても遺言は法律上無効とされてしまいます。

そこで,上記の3つの種類のいずれかの遺言を作成することが,とても重要なことになります。上記3つの種類の遺言とはどのようなものかというと,

①自筆証書遺言

遺言者が,遺言書の全文,日付及び氏名を自分で書き,押印して作成する方式の遺言です。

②公正証書遺言

遺言者が遺言の内容を公証人に伝え,公証人がこれを筆記して公正証書による遺言書を作成する方式の遺言です。

③秘密証書遺言

公証人及び証人の前に封印した遺言書を提出して,遺言書の存在は明らかにしながら,内容を秘密にして遺言書を保管することができる方式の遺言です。

以上が,普通方式の遺言ですが,特別方式の遺言として,病気により死期が迫っている場合等に作成される「死亡危急者遺言」,船舶の遭難により死亡の危急に迫っている場合に作成される「船舶遭難者遺言」などがあります。

 
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「相続」に関する最近の話題。

2012-08-11

最近,増税の問題に関連して,週刊誌などで「相続」が大きく取り上げられています。

この「相続」に関する問題には,実は税務と法務という性質の異なる2つの側面があります。

【税務と法務のちがい】

① 相続に関する税務とは,相続税が課税されるのか,相続税が課税されるとしたら,いくら納税しなければなないのかという問題で,まさに,昨今の相続税の増税に関する話題に直接関係する問題です。

② 相続に関する法務とは,故人の相続財産について,誰が,何を,どのくらい承継するのかについての問題です。

①相続に関する税務とは,対国との関係で税金をいくら納めるのかの問題,②相続に関する法務とは,親や兄弟などの法定相続人とされる親族との関係で遺産について,誰が,何を,どのくらい受け継ぐのかの問題と言い換えることもできます。

①相続に関する税務は税理士の専門領域であり,②相続に関する法務は弁護士の専門領域です。つまり,税務と法務とでは,相談をするべき専門家が違うということです。

【税務と法務どちらが解決困難な問題か】

1 このどちらが解決困難な問題かということに関しては,個別の事案ごとに,税務対策の方が困難である事案もあり,一方で,税金の問題よりも法律上の困難な問題がいくつもある事案があったりで,突き詰めれば,ケースバイケースで,個別の事案ごとに異なるとしか言いようがありません。

2 最近の相続に関する雑誌の記事などに興味を持たれている一般の購読者の方々は,税金を納めたくない,仮に,相続税を納めることになったとしても,なるべく少ない金額で済ませたいというように,相続税に関して注意がいっている方が多いのではないかとも想像します。

しかし,日常の仕事で,「相続」に関する案件にかかわっている立場として,あえて一般論として言うのならば,実は,②相続に関する法務の方が,根深く解決困難な問題を抱えることが多いのではないかと考えています。

3 相続税の問題は,税金の対策をしなかった又は方法選択が不適切であったことにより,数百万円本来納めなくてもよい税金を納めなければならなくなった,さらには,遺産の不動産の一部を納税資金調達のために売却しなければならなくなったという問題として現実化します。

しかし,いくら増税があったとしても,故人が遺した遺産以上のものを税金として納めさせられることはありませんし,経済的な損得はありますが,国に対して納税を完了すれば解決する問題であるといえます。

4 一方,相続に関する法務の問題,つまり,親や兄弟との間で,遺産に関して,誰が,何を,どのくらい承継するのかを決めるという問題は,その承継を決める過程で,親族間で様々な話し合いが必要となります。

・たとえば,「何を」承継するのかという相続財産の範囲の問題での話し合いでは,もっと他の銀行に口座があるのではないかとの話が出て,故人の生前の面倒を見ていた子供が,銀行口座を隠しているのではないかということが問題となるかもしれません。

・また,どのくらい承継するのかという相続分の決定の問題の話し合いでは,長年,故人と同居をしてきた長男は,当然,他の子供は相続財産のほとんどを長男に譲ってくれるものと思い込んでいたところが,結婚以来,遠方で長年暮らしていた長女が法定相続分の主張をしてきたという問題が起こるかもしれません。

このような相続に関する親族の間の話し合いの中では,法律上,解決しなければならない問題が発生することはもちろんですが,親族間ゆえの感情的な問題も発生することが十分考えられます。

そして,法律的な問題に加えて,感情的な問題が発生してしまうと,いつ,どのような形で解決するのかという解決の出口が全く見えなくなってしまう危険性も十分あります。さらに,仮に,相続問題が解決したとしても,解決後には親族間に深いわだかまりや,心に傷が残り,以前のような親族としての付き合いなどはとても望めない事態になることもあります。

このように,相続に関する法務の問題は,深刻化すると,決してお金には代えられない深い心の傷や人間関係の亀裂を生むことがあります。また,いつまで続くのか,そしてどのように解決するのかさえ分からない相続人間の争いに発展する危険性もあるのです。

5 弁護士が,関与することによって上記のような相続に関する法務の問題についての深刻な事態がすべて回避されるかというと,決して,すべてを回避できるわけではありません。

しかし,早期の段階で弁護士が関与することにより,法律的な整理ができた状態で,相続人は,誰が,何を,どのくらい承継するのかを決めることができ,法律的な整理ができていることで,相続人間の無用な摩擦が回避される可能性があることは事実です。

早い段階での弁護士の関与が有用という意味では,故人の生前の遺言書の作成から弁護士が関与することが,一つの弁護士の有用な関与の形であると思います。

一般のサラリーマンの方の中には,弁護士はもちろん税理士の知り合いもいないという方も多いと思います。そのよう方にとっては,弁護士と税理士の両方の専門家に相続の相談をすることは,とても,気が重いことかと思います。

当事務所では,相続についてご相談をしていただいた方が,相続税についての対策もお考えの場合には,提携をしている相続税の処理に精通した税理士と一体となって,相続に関する法務と税務の両方の解決に努める体制があります。

当事務所にご相談をいただければ,相続に関する法務と税務の問題は一度に対策を立てることができます。
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